「――あのさぁ……」 武人と悦子さんの話を聞き終えたあたし。 眉間を人差し指でポリポリ掻いたあと、呆れたように武人を見た。 「あんたは何が言いたいわけよ? ヘタレ誕生秘話?」 「……いや、今のはヘタレ誕生秘話の序章」 「……帰る!」 話を聞く前は、あんなに真剣な表情であたしを引き止めたくせに。 なにふざけたこと言ってんのよ。 ……それに。 悦子さんをこんなに好きでした、なんて話、聞きたくなかった。