「今日は助かった。陣が来なかったら、擦り傷どころでは済まぬところであった」

「勘弁してくれよ。あんな呼び出しに、のこのこ一人で行く馬鹿が何処にいる」

 少し怒った口調で言うと、絵理は「すまぬ」とうなだれた。

「何でオレが行くまで、教室で待っていなかったんだ?」

 そう尋ねると、絵理には珍しく、「それは……」と口ごもった。

「そんなに頼りないか? オレは」

「……そうではない」

 そう言うと、きゅっと唇を噛んでたどたどしく言葉を続けた。

「嫌だったのだ。私が原因で、陣が傷つけられるのは」


 まったく、この姫さんは……。