「国会中継見ながら、将棋指してた」


「……はぁ?」

 千沙子にしては珍しい、間の抜けた返答。

「もっとラブラブかと思ったのに……。拍子抜けしちゃった……」

 想いの通じ合った若い男女が。
 ホテルの一室に二人きりで。
 国会中継を見ながら。
 向かい合って淡々と将棋。

 ……その発想はなかったわ……。

「……さすがですね」
「あの二人なら、確かにやりそうね……」

 何もなくて安心したのは事実。だが。

 オイィ? お前らそれでいいのか?

 気が付けば、オレの嫉妬の炎はきれいに鎮火していたが、その代わり釈然としない何かが残ったのだった。