「――……凪?」
20人程度の人が寝静まった深夜3時過ぎ。ひとりパソコンで住む場所を探していると、懐かしい人と同じ名前を見つけた。
――Mukou Nagi。
画面下に小さく『募集待ってます』と書かれた横にあるめずらしい名字は、俺にとって何よりも大事な記憶の一部だった。
まさか……ありえない。
同姓同名、とか。だけど夢虹なんて名字、そうそういるはずがない。
疑いながらもう一度募集要項を見ると、条件は悪くない。むしろよかった。
家電もついているなら探す手間が省けるし、鍵付きの個室も有難い。金銭的な問題もなかった。
でも……同居……。
知らない人と住むことには抵抗があった。もっとも、誰かと住むということ自体苦手なのだが。
ふと、募集要項の下に書いてある文章の一文に目が止まった。
【集え、眠れぬヒツジたち】
「……つどえ」
どういう意味だろうとか、何が言いたいんだろうとか。そんな考えより先に、今の俺にはピッタリな言葉だと思った。