「有須のこと、好き?」
「うん」
子犬みたいに頭を寄せてくる彗は目を瞑ったまま、口元を少しだけ綻ばせる。
「祠稀も好き。凪も、好きだよ」
「うん、あたしも」
「ギューッてしてあげる」
「いや……もうしてんじゃん」
あたしの腰に手を回して……変だよ彗。甘えん坊の子供みたい。なんて、それはあたしのほうか。
「……もう子供じゃないんだから。ギューなんて、いつの話よ」
「俺はね、嬉しい」
「噛み合ってないよね」
小さい頃みたいに『ギューッてして』なんて、あたしはもう言わないよ。
寂しさと、不安と、苦しさを紛らわせてほしくても。ギューッてしてもらわなくたって、平気になった。
でも、やっぱり。
「あったかい」
そう呟いたあたしの腰に回す腕を、彗はさらにキツく締めた。
ねぇ、彗……。
有須は、孤独を知ってたよ。