僕にキが訪れる

少し表面を撫でてやると、何故か妙に温かかった。

太陽の光で温まったのだろうか?


……いや、違う。


だって、その温かさは、あの日感じたそれと全く一緒だったから。


「おかあさーん?」


いつまでも動かない母親を不思議に思って、女の子が遠くから呼んでいる。

はいはいと答えながら、母親が走って女の子を追いかけた。



その時、風もないのに、その木だけが大きくざわめいた。



驚いて、振り返る。



ただ一本だけざわめく木に、目を奪われて。



その音が、まるで、誰かの笑い声のように聞こえて。



優しいその響きに、母親は、つられて笑っていた。



まるで少女のように、にっこりと、元気よく。