甘えることが苦手な人だった 輪の中心にいた人ではないけれど 人を導く能力のある人だった 自分のために 人に頼ることができない人だった そんな人が僕の前でだけ 花のように笑い寄り添ってくる それは まるで奇跡 それを何故 気づかなかったのだろう 確かに彼女は僕に甘えていた 他人が見れば 彼女を隔てる壁には 僕の分だけ扉があったのに 僕はあの頃 いったい何を見ていたのだろう