「――柚。先生、お帰りになるそうよ」 「あっ、うん。じゃああたし、車のところまで送るよ」 一緒に見送ると言うお母さんを、先生は丁重に断り、あたしだけが見送りに外へと出る。 「――先生。今日はありがとうね」 改まってお礼を言うあたしを見て、先生は笑う。 「礼なんて。……あ、そうだ、村岡」 「なに?」 「おまえに頼みがあるんだけど……」