「奏汰くんから話を聞いたよ」 「……えっ?」 「村岡の家に行ったんだろ?」 あの日。 お母さんがひどく取り乱したことを、奏汰は先生に話したんだ。 「先生ったら、相変わらず【来来軒】に顔出してるんだ。しかも裏口から」 マジメな話をしているのに。 なんだかこの状況が息苦しくて、あたしは先生を茶化しながら、渇いた笑い声をあげる。 「なぁ、村岡」 先生はやっぱり生真面目。 あたしの笑いに誘われることなく、真剣な顔であたしを見る。