「ただいまー」 家に帰りつくと、キッチンからいい匂いが漂ってくる。 その匂いに誘われるように、あたしの足は自然にキッチンへと向かう。 「おかえり、柚」 コンロの前で、なにやらグツグツと煮込んでいたお母さんが、くるりと振り返る。 お母さんの顔を見て、一瞬、嫌な予感がした。 やけにニコニコした作り笑い。 しかも、微妙に引きつっている。 そう。この笑顔は、あたしを怒る直前の顔だ。 「あっ、あたし、宿題が山のように出ていたんだったー」