「失礼しまぁす」 今はすっかり慣れてしまってた。 机に向かって何か書き物をしていたジャージ姿の槙村先生が振り返る。 三十代後半の槙村先生は、【来来軒】の大将と違って年相応の顔をしている。 顔はまぁ、良い方……かなぁ。 あたしのタイプじゃないけど。 槙村先生は隣の席のイスを出すと「そこに座れ」と顎で示す。 いつもあたしがイスに座った瞬間から、槙村先生の説教が始まる。 その流れを分かっていたから、あたしは腰を下ろすなりすぐにうつむいた。 「……ったくおまえは……」 「へっ!?」