部屋の床には相変わらずクリスマスツリーが置かれていて、

1日遅れのクリスマスを演出してくれていた。


泣き出してしまいそうな空より先に泣き出したのは、あたしの方で。


隼人はただ、そんなあたしを抱き締めてくれてた。


苦しくて、だけど自然とスカルプチャーの香りに安心して。


その強い腕の中で、声を上げて泣いたんだ。



“隼人の女”


そんな風に呼ばれなくなったのは、いつからだっけ…?


普通のカップルは、付き合うと幸せになれるのにね。


こんなに苦しい告白は、聞いたことがないよ。



“人並みに幸せになりたい”


子供の頃から思い描いていた小さいけど大切な夢は、この日捨てた。



“隼人の傍に居たい”


それだけしかなかったんだ―――…




隼人と抱き合い、そのままベッドで体を重ねた。


不安な気持ちを忘れ去るように、隼人のことだけ考え続けた。


人の温もりを、こんなに“愛おしい”と感じたことはなかった。


そんなことに、また涙が溢れそうになる。


隼人はあったかくて、強くて、そして優しかった。


繋ぐ手は、大きくて。


だけど本当は、すごく弱くて。


でも、そのどれもを愛してて。


隼人にしがみ付き、背中に爪を立てると、その動きは絶頂に向かった。



「―――ァ!」


あたしの中に吐き出し、崩れ落ちる隼人を、今度はあたしが抱き締めたんだ。


ただ、愛おしかったから。