―――次の日あたしが借りたのは、海の望めるマンション。


広くはないけど、日当たりは良い。


もちろん、畳のないところ。


あたしは今も“隼人の女”だから。





♪~♪~♪

着信:マツ


―ピッ

「はーい。」


『もーすぐそっち着くから。
部屋、借りた?』


「借りたよ~。
でも、荷物入んないわ!(笑)」



ここは、隼人のマンションみたいに広くないから、

デカいテレビも、白のソファーも置く事は出来ない。



『そっか。
じゃあ、適当にトランクルーム借りてブチ込んどいてやるよ。
どれ運ばせれば良い?』


「…ガラステーブルだけで良いよ。」



あたしには、一緒に選んだガラステーブルがあれば、それで良いんだ。



「…それからさぁ。
隼人のロレックスとか、マツにあげる。」


『…形見だろ?
アンタが持ってた方が、喜ぶんじゃねぇの?』


「あたし、フランクミューラーあるから良いよ。
それに、ロレックスつけてる頃の隼人、あたし知らないから…。」


『…わかった。』


少しの沈黙の後、全てを悟ったようにマツは、それだけしか言わなかった。


電話を切り、隼人のフランクミューラーを棚の上に飾った。



ねぇ、隼人…


これで良いんだよね…?