それからマツは、あたしにホテルを取ってくれた。


安いビジネスホテルだけど、あたしには丁度良い。




「…アンタ、どーすんの?」


『…俺は一旦戻って、あの部屋片付けるよ。
明日、朝一で適当な部屋探しとけよ。
引越し業者に運ばせるから。』


「…うん…。」



マツは、本当に尊敬してしまう。


何か言う前に、全て手配してくれていた。


隼人が傍に置いておいた訳が、何となく分かる気がするよ。



『…急性アルコール中毒とかで死ぬなよ?(笑)』


あたしの頭に缶ビールを乗せたマツは、困ったように笑いかけた。


ひんやりとしたその感覚が、

あたしがまだ生きて、そしてここに居ることを教えてくれる。



「ははっ!あたし、そこまで馬鹿じゃないから!」



だからこそ、マツが居てくれて、本当に良かった。



その日の晩、隼人の遺影と一緒に酒を酌み交わした。


そして、初めて泣かずに眠りに着いた。




隼人…


あたしはこれから、独りでどーやって生きれば良い…?


マツからお母さんが無事だって聞いたよ?


だけど、今更“会いたい”なんて思わないんだ。


あたしはとっくの昔に捨てられたし。


あたしは今も、“隼人だけ”で良いんだ…。