『…これから、どーする?
もぉ、ココにも住めねぇぞ?
警察が何度も来てるし、マスコミだって来てるから。』


ゆっくりと聞いてきたマツにあたしは、遺影を見つめて口を開いた。



「…あたし、行きたい所あるんだ。」



また二人で行きたいんだ、あの場所に。



「…海に行きたい。
隼人との約束だから…。」


『…わかったよ。
連れてってやるから。
アンタ一人で行かせて、自殺でもされたら困るしな。』


あたしの言葉にマツは、そう言ってくれて。



「…アンタ、優しいんだね…。」


マツのメンソールの煙草が鼻につき、

ここに隼人が居ないことを嫌でも感じさせられた。


そして二人で部屋を出る。




駐車場に行くと、マツの車がいつの間にか変わっていることに驚いた。



『…俺の車も盗品だったからな。
まぁ、元々は隼人さんの車だったんだけど。
一緒に沈めてやったよ。
心配しなくても、これは正規の車だから。』


「…そう。」



指輪は、昔貰ったダイヤの指輪と一緒に重ね付けした。


隼人の指輪は、ネックレスと一緒にあたしの首元で光っている。


あたしには、それだけあれば十分だ。


車に乗り込むあたしを確認したマツは、シフトドライブに入れた。




「…ねぇ、アンタの本当の名前って何?」


『松本幸成。』


「…そう。
“幸成”って顔してないね。」


マツの煙草を抜き取りあたしは、力なく笑った。



『ハッ。
よく言われるよ。』


自分の煙草を咥えたマツも、同じように笑って。