―ピッ…

『何だよ?
電話してくんじゃねぇよ!!』


通話ボタンを押すなり、隼人は相手を怒鳴りつけた。



『…何でそんなに怒るの…?』


「―――ッ!」


静かな部屋に、電話口から女の声が聞こえてきた。


わかっていたはずなのに全身から血の気が引いて。



『アァ?!黙れつってんだろぉが!!』


『あたしのこと、“愛してる”って言ってくれたじゃない!!』


「―――ッ!」



その瞬間、あたしは全てを悟り、無言で立ち上がった。


今まで、それでも目を背け続けてきた現実が、こうも簡単に突き立てられる。


全てのことがまるで、音を立てて崩れていくみたい。



『とりあえず、また連絡するから!』


あたしに気付き、隼人は慌てて電話を切った。



『ちーちゃん、聞いて!!
違うんだって!!』


「…何が?
あたしはもぉ要らないでしょ?
それとも、お金払ってでも傍に置いときたい?」


冷めた目で見つめるあたしに、隼人は捲くし立てる。



『違うだろ?!金とか関係ねぇから!!
ちーちゃんが一番なんだよ!!』


「…“一番”って何?
じゃあ、二番目は誰…?」



悔しくて、惨めで…


隼人なんか、大嫌いだ…



『ごめん、そんな意味じゃねぇんだよ!!
これは、仕方ねぇことなんだよ!!』


あたしの腕を掴み隼人は、自分に引き寄せた。


触られた場所から、嫌悪感ばかりに支配されて。



「離してよ!!
アンタのしてること、意味わかんない!!
あたしの存在は、アンタにとって一体何なの?!」


必死で抵抗し、声を荒げた。


隼人のしてること全部、あたしには理解出来ないよ。