―――季節はすっかり冬の装いに変わり、11月になった。


あの一件以来、また隼人は前と同じ生活に戻ってしまった。



“隼人が無事なら、それだけで良い”


必死で、自分自身に言い聞かせ続けた。


毎日隼人の帰宅した姿を見ないと、

安心して眠りに着くことすら出来なくなっていて。


本当に身も心も限界で、毎日押し潰されそうなほどの不安と戦っていた。




―ガチャ…

「隼人?!」


物音がするだけで、玄関に走ってしまう。



『…ただいま…。』


「…おかえり。
今日は、早いんだね…。」


珍しく隼人が、12時をまわる前に帰ってきた。


だけど相変わらず、お酒臭くて。



『…無性にちーちゃんの顔見たくなったから…。』


力なく笑った隼人の顔は、精気がなかった。


もぉずっと前から隼人は、昔の顔つきと変わっていた。


いつもいつも、泣いてるみたいな顔してる。



「…何か、あった…?」


『…別に、何もないよ。』


「…そう…」


それ以上言わない隼人に、唇を噛み締めた。


何も言われないのに、あたしが居る意味なんてあるの?


ただ隼人の家で暮らしてるだけ。


セックスさえもされなくて、あたしの存在なんて、愛玩動物と一緒なんだ。