『…俺がチンピラに狙われたことあったろ?
ホントはずっと、そのこと探ってた。
今、犯人の目星着いたから。』


「―――ッ!」


ゆっくりと話し出す隼人に、背筋が凍りついて。



「ねぇ、一体誰なの?!
何の目的―――」



♪~♪~♪

『ごめん、話は後だ。』


「―――ッ!」


鳴り響いた携帯に、あたしの言葉は簡単に遮られた。


ディスプレイの名前を確認した瞬間、隼人のその表情は鋭さを増して。


またあたしから、遠くなっていくのを感じる。



―ピッ…

『―――ハイ。
わかりました。
すぐ向かいます。』


隼人の目は、覚悟をしたようにしか見えなかった。


まるで、死にに行くような目つきにさえ見える。



「隼人!!行っちゃダメ!!」



こんなことを言ったのは、ホントに初めてだった。


だけど、なりふりなんて、構ってられなくて。



『…ごめん、ちーちゃん…。
心配しなくても、戻ってくるから!』


「やめて!お願い!!
他の人に行かせればいいじゃん!!
今日だけだから!!お願い!!」


『…ごめん。
俺じゃないと無理なんだ。
行ってくる。』


あたしの握り締める手をゆっくりと外し、隼人は歩き出した。


落ちていく手を、それ以上伸ばすことさえ叶わなくて。


あたしには、どこに行くのかも、誰と会うのかわからない。


何も言えなくて。


ただその場で、泣き崩れるしかなかった。


季節は既に、秋に変わっていたのに。


そんなことにさえ、気付けなかった。