『―――ちーちゃん、食おう?
オマールエビだって!好きだろ?』


まだ少しだけ動いているエビの触覚をツンツンつつき、隼人は笑顔を向けてきた。



「…うん。」


対照的に、あたしは先ほどのことを思い出し、豪勢な料理の前でため息をついた。


何となく、あの写真があるから喜ぶに喜べないし。



『…何で怒ってんの?
良いじゃん、結果的に俺を喜ばせたんだし。』


「うるさいよ!
それ以上言うな!!」


『…ハイハイ。』




あたしは隼人に何が出来た…?


こんなことなら、もっと色んなことをしておけば良かったね。


でもきっと、どんなに足掻いても、結果は変わらなかっただろう。


だってあたし達の運命は、出会った時から決まっていたのだから。



料理は色鮮やかに机の上に並べられていた。


広いその部屋に見合うほどの高級感が漂っていて。


どれから手をつけようか迷ってしまう。


いつものリビングのテーブルより、ずっと大きなテーブル。


こんなの、初めてだったから。


ムカついてたことを忘れあたしは、舌鼓を打った。


見たこともないその土地のニュースを見て、

聞いたこともない場所の野菜が豊作だとか。


流れる時間は穏やかで、本当に日常から開放されて。


今にして思えば、束の間の夢を見た気分だよ。



ねぇ、隼人…


隼人も楽しかったでしょ?


ちゃんと、聞いておけば良かったね。