今でも鮮明に思い出すよ、あの日のことを…


隼人が居れば、それだけで幸せだった日々。


こんな他愛もない幸せさえも、あたしから奪ったんだね。


一体あたしは、誰を恨めば良いんだろう。




『…ちーちゃん、絶対消したらダメだよ?』


「ヤダ!」


『ダメだし。
決定事項ですから。』


「アホ隼人!!」


デジカメを投げつけ、口を尖らせた。



―コンコン!

『夕食をお持ちしました。』


タイミング良く、ドアの方から声が聞こえた。


時刻を見ると、夜の7時ちょうどを差していて。



『…日本人は嫌になるな、時間通りすぎて。』


「あたし、あっちで着替えてくる!」


ため息をつく隼人を無視し、

床に散らかった浴衣や帯をかき集め、急いで別の部屋に逃げた。



『…ハイハイ。』


ズボンだけ履いた隼人は、ダルそうにドアに向かった。


急いで服を着て、髪の毛を直して。


あたしが部屋に戻るのと同じタイミングで、

ボーイがカラカラとキャスターを引いて料理を運ぶ。



『テーブルにお運びすればよろしいですか?』


『…勝手にして。
てゆーか、アンタも無粋だな。』


床に転がったかんざしを見て少しだけ笑った隼人は、

男のポケットにチップを入れた。



『失礼致しました!』


そして何かを察したように急いで食事を置き、逃げるようにいなくなってしまった。


まるで嵐のような出来事を、あたしは白い目で見つめる。