「…でも、仕事は?」


隼人の仕事は、突然の呼び出しも多い。



『良いよ、マツに押し付けときゃ!
ちーちゃんも連休取っとけよ?』


「うん!」



ゴールデンウィークにフルで働いたし、それくらは取れる。


思えばこれが、あたし達の最初で最後の旅行だった。


まるで神様が、この後起こる試練を予想していたみたいに。


だけど、あたしにはそんなことわからないから、まるで浮かれ気分だった。


折角入った給料は、全てこの旅行につぎ込んでしまった。


それくらい、あたしには嬉しい出来事だったんだ。





『…まだ買うの…?』


両手にあたしの荷物を持ってくれた隼人は、うんざりした顔で聞いてきた。


だけどあたしは、構わず次の目的地へと足を進める。



「だって、お泊りセット欲しいし!
それに、新しい下着も欲しい♪」


『おっ!それは最高!(笑)』


「でもその前に、お菓子ね!」


ランジェリーショップに向かおうとする隼人の腕を引っ張った。



『ハァ?
家にイッパイあるだろ?!』


「旅行用じゃん!」


『どんだけ食うんだよ!
500円までにしとけよ?(笑)』


「うっさい!」


口を尖らせ、駄菓子屋に向かった。



あたしが喜べば、隼人も喜んでくれて…


それだけで幸せだった。


何がいけなかったの…?


何があたし達を狂わせたの…?