―――季節は5月を向かえ、すっかり暖かくなった。


隼人のプレゼント攻撃はいつも突然で、

最近ではクローゼットの中身だけでファッションショーでも開けそうなほどだ。


それだけじゃない。


アクセサリーやバッグ、ネイルにエステ、全て隼人が勝手に用意していた。


こんな生活は、一介のフリーターのやってるこことじゃないのに。





『―――ちーちゃん、旅行行かない??』


「ハァ?!
意味わかんないし。」


突然の提案に、口元を引き攣らせた。



『…だって、ゴールデンウィークもどこも連れてってやってないだろ?
てゆーか、付き合ってから、どこも行ってないじゃん!!』



そんなこと、気にしてたの?


隼人とは、旅行もなければ海もない、

花火大会も行楽も、スノボすらも一緒に行ったことがなかった。


一緒に行くと言えば、ホントにショッピングくらい。



テレビを見ていると羨ましくなることもあったが、

あたしは隼人が毎日無事に帰ってきてくれれば、それだけで良かったから。


何も望んでなかった。


だからこそ、耳を疑うような提案だった。




『どこ行きたい?』


「…てゆーか、決定事項なんだ。」


ため息をつき、煙草を咥えた。



『…嫌なん?』


「そんなんじゃないよ!
ただ、考えてもみなかったから。」


焦って声を上げた。


突然言われたって、思いつくはずもない。



『温泉とか良くない?』


「うん、良いね♪」


『よっしゃ、決定!!』


こうして、数秒で行き先は決まった。