『ちーちゃんも食えよ!
不味いんだったら、他の店にする?』


「―――ッ!」


瞬間、急いで顔を上げた。



「違うよ、美味しいから…!」


そして、慌てて箸をつける。


そんなあたしに気付いているのかいないのか。



『…そ?
なら良いけどさ♪』


隼人は笑顔を向けてくれた。


そんなやりとりを見ていたのだろうマツが、ゆっくりと口を開いた。



『…隼人さんって、女の前で優しい顔するんすね…。』


そしてあたしの前で、初めて少しだけ笑って。


『何か、羨ましいっす…。』


「―――ッ!」



違うよ…。


何も、羨ましがられることなんてない。


あたしは、隼人が居ないと生きていけなくて。


たったそれだけ。


隼人に頼って生きてるだけの、弱いだけの存在なんだ。


そして、過去を隠して隼人に嫌われないようにしてるだけ。



『…それは、俺がてめぇにヒドイことしてるって言いたいのか?』


だけど隼人は、マツを睨み付ける。



『違いますよ!!
隼人さんでもそんな顔するのか、って思って…。』


そう言うと、マツはそのまま口ごもった。


隼人はいつも、どんな顔をしているの?


笑ってるのは、あたしの前だけ?


そう思うと、余計に胸が苦しくなって。


あたしには、そんな価値なんてないのに。