「ずっと……別れてからずっとイライラしてしょうがなかった。
イライラして……寂しくて堪らなくなって、全然足りなくて……」
「志乃、……」
「そういうの全部、あたし全部……哲じゃなきゃダメなの……
どうしょうもない男だって分かってるのにっ……
またくだらない事繰り返すの分かってるのにっ……哲じゃなきゃ、ダメ」
「……志乃」
ゆっくりと立ち上がった哲が、あたしへと歩み寄る。
最初からそんなになかった距離をゆっくりと縮めてくる哲を、あたしは黙って見つめていた。
遠い街灯の明かりを背中にする哲に、少しだけ胸がドキドキする。
半年振りの距離に……ドキドキする。
「志乃……本当にごめん」
哲は、つま先同士がくっつくほどに近付いて……少しだけ身体をかがめてあたしのおでこに自分のおでこをくっつけた。
そして、伏せた目で謝る。
「ごめんな……」
「……約束、ちゃんと守ってよね」
「約束……? あ、岸……」
「岸田の髪じゃないよ。……哲、あたしに告白した時、後悔させないからって言ったじゃん。
……それ、ちゃんと守ってよ。あたしは守ったんだから――――……」
『好きにさせてみせる』
哲に言われた通り、ちゃんと好きになったんだから……
こんなにどうしょうもない男を、こんなに好きになっちゃったんだから――――……
あたしの言葉に哲はふっと笑って……おでこを少し離してからあたしの手を取った。



