恋のコトバ【短編×Ⅱ】



※※※



「……、ん、あれ?」


いつの間にか机に突っ伏してた身体を起き上がらせると、回りはもう真っ暗だった。

校庭を照らす白いライトに、ここが学校だって事に気付いて……あたしは慌てて起き上がった。


すると、あたしの身体に掛かってたものがぱさっと床に落ちて……あたしはそれを拾い上げる。


「……っ」


手にしたものは、濃紺のジャージ。

白いラインが入ってる、ジャージ。


哲の、ジャージ――――……


ずっとここから見てきた哲は、毎日このジャージに袖を通してた。

これを着た哲を、毎日毎日あたしはここから見てて……


胸の辺りが苦しくなって、ジャージを胸の前で抱き締めると、哲の使ってる香水の匂いがした。

あたしと付き合ってた頃と同じ香水の匂いが、あたしの胸をもっともっと締め付ける。


少しの間そうしてたけど……ふと気付いた疑問にあたしは教室を見渡した。

なんで哲のジャージがここに……


それは、誰かがあたしにかけたって事で。

それは……多分、このジャージの持ち主で――――……


だけど、いくら周りを見渡しても哲の姿はなくて。

グランドを見ても哲はいなくて。


練習を終えたサッカー部は、後片付けに追われているようだった。