恋のコトバ【短編×Ⅱ】




あたしの出した条件に、哲は一瞬うろたえた。

体育教官の岸田は、誰もが知る鬼教官。

40歳を過ぎてから薄くなった髪を気にしてるってのがもっぱらの噂。


『それやったら本当に友達になってくれるんだよね……?』

『本当に出来たらね』


その後、哲は髪をくしゃくしゃしながらうろうろして。

そのまま姿を消した。


で、再びあたしの前に哲が現れたのは……その日の放課後。


『待てーーー!!! 遠藤!!!』


そんな岸田の声にぎょっとして振り向くと、岸田とその前を走る哲の姿があって。

全力疾走の哲はあたしを見つけると人懐っこい笑顔を浮かべて、あたしの前で急停止した。


『ほい、コレ』

『……なに?』

『岸田の毛』

『岸……ぎゃっ、汚っ!!』


『遠藤ぉ!! 高坂ぁーー!!!』



うっかり零してしまった一言のせいで、その日、遅くまで岸田のお説教は続いた。

あたしの隣では全然反省なんかしてない様子の哲が正座していて。

その態度を何度も岸田に怒られてた。


あたし達がやっと解放されたのは……時計が17時を回ってから。

春の空が、まだ明るくあたし達を迎えてくれた。


『……あー……ひどい目に遭った』


ぽつりと零したあたしに、哲はあたしの前に回りこんであたしを見下ろした。


『って事で、友達よろしくー』


にっと笑う哲に……断る理由をなくしたあたしは、思わず笑みを零した――――……