「僕も少しは霊への対処法を勉強しているし、隣だから河村さんの目も届いて安心だと思うんですけど」
彼の側でなぜか頬を上気させている裕一郎に、河村はハッと我に返った。
「ダメだ、いくら君が正式なここの社員になったとは言え、裕一郎を任せられるかどうかはまた別の問題だ」
「…だって、裕一郎くん。保護者の河村さんにそう言われちゃうと、僕としてはこれ以上何も言えないかな」
しかし、その言葉と裏腹、尚人は楽しそうな表情を浮かべている。
ホッとする河村、残念そうな裕一郎。
実に対照的な2人の姿がそこにあった。
「オレの部屋より、津久見さんの家の方が安心して眠れそうなんだけど…」
未練たっぷり裕一郎が文句をこぼすと、不意に尚人に手首を掴まれる。
「?」
「だったら、これ…」
そう言った彼にスルリと《例の指輪》を嵌められ、
「わーっ!!」
裕一郎は、辺りに響き渡るような叫び声を上げた。
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