2人掛けのソファーに尚人が、その向いに2つ並んでいる1人掛けのソファーにそれぞれ河村と裕一郎が座り、昼食をとっていた。
…が、それは決して和気あいあいと言えるものではない。
静かすぎる室内。
河村から誘った割には会話が弾まず、男3人黙々とテーブルを囲んで物を食べている姿はある意味異様な光景だった。
(消化悪いなぁ…もう…)
食べている気がしなくて、裕一郎はチラリと横に座る河村を見る。
それから正面の尚人に目をやった。
まだ荷物の整理が出来ていないからか、グレーのフルジップTシャツと黒のカラージーンズという随分とラフな服装である。
今まで会った中では、初めて見る格好だった。
(それにしても何でわざわざ、ここに引っ越して来たんだろ…)
裕一郎はサンドイッチをパクリと頬張る。
今、彼が目の前にいる事が信じられない。
それどころか、これからは隣人という関係なのだ。
そう考えるととても嬉しいが、引っ越しの真意が分からなくて、気がつくと裕一郎は思いっ切り彼を見つめていた。
と、コーヒーを飲んでいた尚人と目が合う。
「なに?」
「えっ!?」
まさか話掛けられるとは思っていなかったので、裕一郎は慌てた。
「ずっと何か言いたそうな顔をして座ってるから」
そう言って、彼はクスクスと笑う。
「あ…えっと…」
「全くだ。そんな顔で横に居られると、こっちが気になって仕方ない」
河村も前を向いて食事を続けながら、尚人の言葉に同意見だと頷いた。
「……」
裕一郎は2人の顔を交互に見る。
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