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社員募集を巡る戦いは、2日もすると裕一郎の根性に負けた河村が貼り紙をやめる事によって終結していた。
それから数日。
夏休みを明日に控えた裕一郎が学校から帰ると、ビルの前に小型のトレーラーが停車していた…どうやらついに、隣に新しい住人が引っ越してきたらしい。
(今日も募集広告はなし、と)
油断は禁物と、一応入口付近の貼り紙をチェックは忘れない。
相手はあの河村なのだ。
いつまた密かに始めるか分かったものではない…そんな事を思いながら、引っ越し業者が忙しく往復している姿を横目に、裕一郎は狭い階段を上がると事務所のドアを開けた。
「ただいま」
鞄をソファの上にポンと置くと、デスクの河村に近づく。
「おぅ、お帰り」
忙しく書類の整理をしていた彼は、パソコンから目を離さないまま返事をした。
「隣、引っ越してきたみたいだね」
「あぁ…そうだな」
「今度はどんな人だろ。怪しい会社とかじゃないといいけど…」
「どうかな。一応、渡部さんもその辺は確認してから入居させるようにしてるから、大丈夫じゃないか?」
その言葉に裕一郎は苦笑する。
(霊障事務所が許可されるくらいだから、渡部さんの基準も相当変だと思うけどね)
心の中でそう呟くと、壁に掛った時計に目をやった。
「久司、そろそろお昼だよ。玉子サンドで良かったら作ろうか?」
「ん?もうそんな時間か…」
思い切り背のびをすると、河村もカッターの袖を捲る。
「じゃ、一緒に作るか。ハムやレタスも買ってきてるからな」
事務所のドアについているプレートを《準備中》に差し替えると、彼もキッチンに入り裕一郎と共に昼食の準備を始めた。
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社員募集を巡る戦いは、2日もすると裕一郎の根性に負けた河村が貼り紙をやめる事によって終結していた。
それから数日。
夏休みを明日に控えた裕一郎が学校から帰ると、ビルの前に小型のトレーラーが停車していた…どうやらついに、隣に新しい住人が引っ越してきたらしい。
(今日も募集広告はなし、と)
油断は禁物と、一応入口付近の貼り紙をチェックは忘れない。
相手はあの河村なのだ。
いつまた密かに始めるか分かったものではない…そんな事を思いながら、引っ越し業者が忙しく往復している姿を横目に、裕一郎は狭い階段を上がると事務所のドアを開けた。
「ただいま」
鞄をソファの上にポンと置くと、デスクの河村に近づく。
「おぅ、お帰り」
忙しく書類の整理をしていた彼は、パソコンから目を離さないまま返事をした。
「隣、引っ越してきたみたいだね」
「あぁ…そうだな」
「今度はどんな人だろ。怪しい会社とかじゃないといいけど…」
「どうかな。一応、渡部さんもその辺は確認してから入居させるようにしてるから、大丈夫じゃないか?」
その言葉に裕一郎は苦笑する。
(霊障事務所が許可されるくらいだから、渡部さんの基準も相当変だと思うけどね)
心の中でそう呟くと、壁に掛った時計に目をやった。
「久司、そろそろお昼だよ。玉子サンドで良かったら作ろうか?」
「ん?もうそんな時間か…」
思い切り背のびをすると、河村もカッターの袖を捲る。
「じゃ、一緒に作るか。ハムやレタスも買ってきてるからな」
事務所のドアについているプレートを《準備中》に差し替えると、彼もキッチンに入り裕一郎と共に昼食の準備を始めた。
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