「はーい、そこまで」
「!!」
いいタイミングで現れた双瀬は刃物を持っていた手を掴むと、裕一郎を後ろから羽交い絞めにした。
「裕一郎、こんな物騒なもん手にして何やってんだ。紛いなりにもお前の親代わりの人間だぞ…」
「…真剣な話してるのに、ふざける久司が悪いんだ」
「それでも刃物は感心しないな」
手から包丁を取り上げられた裕一郎は、しゅんとうな垂れる。
「はぁ…助かったよ、双瀬」
緊張の糸が切れたのか、河村はドサッと床に座り込んだ。
それを見て彼は顔を顰(しか)める。
「何が『助かった』だよ。伝言があるから来てみれば、お前ら2人は喧嘩の真っ最中。黙って見てようかと思ったが、ほっといたら警察沙汰になりそうな最悪の展開だ。大体、お前は大人げないんだよ。いい加減そのねじ曲がった性格、直せ」
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