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2人が事務所に戻ったのは、昼をとっくに過ぎた頃だった。
中途半端な昼食になるので、とりあえずの腹ごしらえと河村が素麺を茹でる。
それを食べ終え、一息ついた所で裕一郎は疑問をぶつけてみた。
「ねぇ」
「何だ?」
ゆったりとソファの背に凭(もた)れ寛いでいた河村は、目を瞑ったまま返事をする。
「津久見さんと、いつ会ったの?」
「うーん。さぁな…会ったことあったっけな…」
「しらばくれんなよ。会った事のない人間が『お久しぶりです』なんて言葉、使う訳がないだろ。オレに黙っていつ会ったんだよ」
「そう言われても、記憶…ないんだけどなぁ」
相変わらず、飄々とした態度。
「オレ、真面目に聞いてるんだけど」
「俺だって真面目に答えてるさ。年を取ると、若い頃みたいに何でも覚えてられないんだよ。だから昔の事は忘れた。おっさんの脳は、今日の事だけで記憶の容量はいっぱいいっぱいなんだよ」
「…」
やはりいつもの調子で、聞きたい事をはぐらかされる。
せめて真面目に答えてくれればいいものを、そのいい加減な受け答えに、裕一郎はイラッとするものを覚えた。
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2人が事務所に戻ったのは、昼をとっくに過ぎた頃だった。
中途半端な昼食になるので、とりあえずの腹ごしらえと河村が素麺を茹でる。
それを食べ終え、一息ついた所で裕一郎は疑問をぶつけてみた。
「ねぇ」
「何だ?」
ゆったりとソファの背に凭(もた)れ寛いでいた河村は、目を瞑ったまま返事をする。
「津久見さんと、いつ会ったの?」
「うーん。さぁな…会ったことあったっけな…」
「しらばくれんなよ。会った事のない人間が『お久しぶりです』なんて言葉、使う訳がないだろ。オレに黙っていつ会ったんだよ」
「そう言われても、記憶…ないんだけどなぁ」
相変わらず、飄々とした態度。
「オレ、真面目に聞いてるんだけど」
「俺だって真面目に答えてるさ。年を取ると、若い頃みたいに何でも覚えてられないんだよ。だから昔の事は忘れた。おっさんの脳は、今日の事だけで記憶の容量はいっぱいいっぱいなんだよ」
「…」
やはりいつもの調子で、聞きたい事をはぐらかされる。
せめて真面目に答えてくれればいいものを、そのいい加減な受け答えに、裕一郎はイラッとするものを覚えた。
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