指輪の手がかりもなくなってしまったし、尚人ともすれ違ってしまう。
唯一救いなのは霊の正体が分かった事だろう。
「久司、オレあの女の人の指輪探し出してあげたいんだ。でも1人じゃ無理だって分かってるから、手伝って欲しいんだけど…ダメかな」
「何だ、もうパートナーの事は諦めたのか」
「そうじゃないけど…」
「だったら、もう1度捜してこいよ、ほら」
うな垂れている彼の背中を河村は押した。
「久司…」
裕一郎は振り向くと、元気のない声を出す。
「お前の思いが強ければ、必ず会える」
「うん…」
頷くと、河村に背中を向けた。
情けない自分を奮い立たせるように、クッと顔を上げて前を見る。
「…ぁ……」
そこに彼が見たもの…。
「津久見さん…」
「裕一郎くん、捜してたんだよ」
どこにいたのか…あれほど捜しても見つけらなかった尚人が、向こうから駆け寄ってきた。
「河村さんも来られていたんですね。お久しぶりです」
そう言うと、彼は軽く会釈をする。
「へぇ、どういう風の吹き回しかな…君の方から現れるなんて」
「そうですね…僕も驚いてますよ、自分の心境の変化に」
河村の皮肉を尚人は軽く受け流すと、小さく笑った。
.


