Darkness † Marker 5 【彷徨う者】


指輪の手がかりもなくなってしまったし、尚人ともすれ違ってしまう。

唯一救いなのは霊の正体が分かった事だろう。

「久司、オレあの女の人の指輪探し出してあげたいんだ。でも1人じゃ無理だって分かってるから、手伝って欲しいんだけど…ダメかな」

「何だ、もうパートナーの事は諦めたのか」

「そうじゃないけど…」

「だったら、もう1度捜してこいよ、ほら」

うな垂れている彼の背中を河村は押した。


「久司…」


裕一郎は振り向くと、元気のない声を出す。

「お前の思いが強ければ、必ず会える」

「うん…」

頷くと、河村に背中を向けた。

情けない自分を奮い立たせるように、クッと顔を上げて前を見る。


「…ぁ……」


そこに彼が見たもの…。



「津久見さん…」



「裕一郎くん、捜してたんだよ」


どこにいたのか…あれほど捜しても見つけらなかった尚人が、向こうから駆け寄ってきた。


「河村さんも来られていたんですね。お久しぶりです」


そう言うと、彼は軽く会釈をする。


「へぇ、どういう風の吹き回しかな…君の方から現れるなんて」


「そうですね…僕も驚いてますよ、自分の心境の変化に」


河村の皮肉を尚人は軽く受け流すと、小さく笑った。

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