「久司の指輪に対する発言が変だと思ってたけど、ひょっとしてあれがあの人の仕業だって最初から知ってたのか!?」
「お前、気付くの遅すぎ」
彼は少年の額を人差し指でピシッと弾いた。
「痛ぇーっ!!」
ヒットした痛みに、裕一郎は両手で額を押さえて呻く。
「お前の左手の事を知ってる人間が、この世にどれだけいると思ってるんだよ。ごくごく身近な者だけだろうが。それを1人ずつ消去していけば、最後に残るのは彼だけだ」
「…」
「それに彼の知人には寺の息子がいる。双瀬と違って随分と才能ある若者みたいだから、お守りの1つや2つ作れたって不思議はない」
「随分詳しいんだな、津久見さんの身辺の事…まさか興信所使って、調べたんじゃないだろうね」
「当然だろ、お前とパートナーを組むかも知れない人間の事を知っておいて、何が悪い?」
しれっと答える河村を、彼はギッと睨みつけた。
「どうしてそんな勝手な事…」
「じゃあ、彼がお前に断りもなく指輪を嵌めたのは勝手な事じゃないのか?」
「…」
「俺はこれでもお前の気持ちに対して、百歩譲ってやってんだよ。仕事のパートナーとして組もうが、街中で会って話をしようが文句を言うつもりはない。だが、俺は彼の事を全く知らないんだ…心配して調べるくらい、罰は当たらないだろう?」
その言葉が分からなくもない裕一郎は、頷く代わりに目を伏せた。
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