「この事故の現場で…拾いました…綺麗だったので、つい…」
「あなたが正直な人で良かった…ありがとう、返しに来てくれて。彼女もこれで安心して、旅立つ事ができます」
彼女から指輪を受け取ると、尚人はニコリと微笑む。
「あの…警察を呼ばないんですか」
「どうして?」
「…どうしてって…」
その言葉に困惑した表情を浮かべた。
「探していたいたものはここにあります。警察を呼ぶ必要なんてどこにもありませんよ」
どうぞ行って下さい…尚人は優しく言った。
「酷い事をしてしまって、本当にすみませんでした。し、失礼します」
女性はペコリ頭を下げると、慌てて走り去って行った――。
その後ろ姿を見送った後、尚人は手の中の指輪を見る。
プラチナのシンプルなデザイン。
(CHIKA to KEI…これ結婚指輪、なんだ)
内側に彫られた文字を見て、彼は何だか切なくなった。
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