Darkness † Marker 5 【彷徨う者】


「この事故の現場で…拾いました…綺麗だったので、つい…」

「あなたが正直な人で良かった…ありがとう、返しに来てくれて。彼女もこれで安心して、旅立つ事ができます」

彼女から指輪を受け取ると、尚人はニコリと微笑む。


「あの…警察を呼ばないんですか」


「どうして?」


「…どうしてって…」


その言葉に困惑した表情を浮かべた。

「探していたいたものはここにあります。警察を呼ぶ必要なんてどこにもありませんよ」

どうぞ行って下さい…尚人は優しく言った。


「酷い事をしてしまって、本当にすみませんでした。し、失礼します」


女性はペコリ頭を下げると、慌てて走り去って行った――。



その後ろ姿を見送った後、尚人は手の中の指輪を見る。

プラチナのシンプルなデザイン。


(CHIKA to KEI…これ結婚指輪、なんだ)


内側に彫られた文字を見て、彼は何だか切なくなった。

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