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「突然現れたかと思ったら、一方的に話しかけて人を疑うなんて。あなたは、誰なんですか…」
彼女は警戒というより、怯えた目をしていた。
手が、足が震えている。
明らかにやましい気持ちを隠していると言わんばかりの態度だった。
それに対し、尚人は淡々とした姿勢を崩さぬまま静かに答える。
「僕はただ持ち主に頼まれただけです、指輪を探して欲しいと…」
それを聞いた彼女は、
「頼まれた?そ、そんな事ある訳ないじゃないですか。だってその人はもう…!!」
言いかけて、ギュッと口を噤(つぐ)む。
「その人は、もう?」
『何?』と尚人に顔を覗きこまれ、狼狽(ろうばい)したように目を逸らした。
「本当は返そうと思って、この場所へ来たんですよね?」
問い詰めるでも責めるでもない、優しい口調で問われて彼女は俯く。
「あなたがどういう経緯で手に入れたのかは知りません。けれどそれは持ち主がとても大切にしているもののようなんです。それが見つからないと、心がここに残ってしまってどこへも行けなくなってしまう…言わなくても分かりますよね、指輪の持ち主が誰か」
女性は小さく頷いた。
「すみません…」
握っていた右手を開くと、そこには銀色に輝く指輪があった。
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「突然現れたかと思ったら、一方的に話しかけて人を疑うなんて。あなたは、誰なんですか…」
彼女は警戒というより、怯えた目をしていた。
手が、足が震えている。
明らかにやましい気持ちを隠していると言わんばかりの態度だった。
それに対し、尚人は淡々とした姿勢を崩さぬまま静かに答える。
「僕はただ持ち主に頼まれただけです、指輪を探して欲しいと…」
それを聞いた彼女は、
「頼まれた?そ、そんな事ある訳ないじゃないですか。だってその人はもう…!!」
言いかけて、ギュッと口を噤(つぐ)む。
「その人は、もう?」
『何?』と尚人に顔を覗きこまれ、狼狽(ろうばい)したように目を逸らした。
「本当は返そうと思って、この場所へ来たんですよね?」
問い詰めるでも責めるでもない、優しい口調で問われて彼女は俯く。
「あなたがどういう経緯で手に入れたのかは知りません。けれどそれは持ち主がとても大切にしているもののようなんです。それが見つからないと、心がここに残ってしまってどこへも行けなくなってしまう…言わなくても分かりますよね、指輪の持ち主が誰か」
女性は小さく頷いた。
「すみません…」
握っていた右手を開くと、そこには銀色に輝く指輪があった。
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