Darkness † Marker 5 【彷徨う者】

        ☆



(あれっ…どこに行った!?)


裕一郎は人ゴミの中に姿を見失って、キョロキョロと辺りを見回した。

階段を上って地上へ出た後、道を真っ直ぐ行った1つ目の角を左に曲がった所で見失ってしまったのだ。

そんなに足が速かったとは思えない。

太陽の下でも霊は見えるのだから、あの影が光に当たり消えてしまったとは考えにくかった。


(せっかく手掛かりをみつけたと思ったのに…)


諦めきれずにもう少し捜してみようかと思った時、

「おい」

背後から不意に腕を掴まれる。


「!!」


裕一郎はビクッとして振り向いた。

「裕…お前、事務所に帰ってたんじゃなかったのか?」


「久司…」


「慌ててるみたいだが、どうした」

いつになくそわそわとした少年の様子に、河村は尋ねる。

「今、犯人の影を追ってるんだ。髪の長い、グレーのスーツを着た女の人なんだけど…」

「髪の長い、グレーのスーツの女性って言ってもなぁ…そんな格好した人間たくさんいるし。大体、犯人って何の?」


「指輪を持って逃げた犯人だよ」


「指輪…?」


それを聞いて、河村は裕一郎の左手に視線をやった。

「外れたのか?」


「…あ、いや、この指輪じゃなくて、探してくれって、えっとオレの所に現われた霊の…」


「おい、少し落ちつけよ。話の内容がさっぱり理解できん」

苦笑まじりに肩をポンと叩かれ、彼は余裕をなくしている自分に気づく。


「だよね…」


「ゆっくりでいいから、順を追って話してみろ」


辺りを見回し、これ以上影を追えないと知った裕一郎は諦めた表情を浮かべると、再び口を開いた。

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