Darkness † Marker 5 【彷徨う者】


「?」

その瞬間、ふわりといい香りがした。


(あれ…この柑橘系の、匂い…)


そう言えば、駅のホームでこの匂いを嗅いだような…。

「如月、どうかしたか?」

「啓太、香水つけてる?」

「いや、つけてないけど…帰りの電車が混雑してたから、誰かの香りが移ったのかもな」

啓太は自分の制服のニオイを嗅ぎながら答えた。

「そう…あ、そうだ。この指輪、啓太が嵌めた?」

裕一郎は左手を見せる。

「えーっ、僕はそんな事しないよ」

「だよな」

当然の反応に彼は苦笑した。

「如月の持ち物じゃないのか?」

「うん。駅で倒れてここに運ばれるまでの間に、誰かがこれをオレの指に嵌めたみたいなんだ。しかも外れなくて困ってる」

「嘘っ!?」

啓太は裕一郎の手を掴むと、指輪を抜こうと引っ張る。

やはりそれはどうやっても外れなかった。


「ボンド付け…?」


「…じゃないみたいなんだけど」

裕一郎は自分と同じ考えをする親友に、思わず苦笑する。

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