「?」
その瞬間、ふわりといい香りがした。
(あれ…この柑橘系の、匂い…)
そう言えば、駅のホームでこの匂いを嗅いだような…。
「如月、どうかしたか?」
「啓太、香水つけてる?」
「いや、つけてないけど…帰りの電車が混雑してたから、誰かの香りが移ったのかもな」
啓太は自分の制服のニオイを嗅ぎながら答えた。
「そう…あ、そうだ。この指輪、啓太が嵌めた?」
裕一郎は左手を見せる。
「えーっ、僕はそんな事しないよ」
「だよな」
当然の反応に彼は苦笑した。
「如月の持ち物じゃないのか?」
「うん。駅で倒れてここに運ばれるまでの間に、誰かがこれをオレの指に嵌めたみたいなんだ。しかも外れなくて困ってる」
「嘘っ!?」
啓太は裕一郎の手を掴むと、指輪を抜こうと引っ張る。
やはりそれはどうやっても外れなかった。
「ボンド付け…?」
「…じゃないみたいなんだけど」
裕一郎は自分と同じ考えをする親友に、思わず苦笑する。
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