「あれっ?」
ベッドの上でぼんやと窓の外を見ていた裕一郎は、それが傍にいない事に気がついた。
「式蝶が…いない」
いつもだったら目に見えなくても、近くにいる気配があるのに…。
そう言えば、駅にいる時も既にいなかったような気がする。
元々、裕一郎は河村から借りているだけだから、正式な主ではない。
だからだろうか、あれは時々黙っていなくなる。
命令もしないのに、まるで自分の意思だけで動いているような感じがしていた。
(何がお前に貸してやる、だよ。言うことを聞かない式なんて、持たないのと一緒だ)
結局、あの式は裕一郎を主だとは思っていない、そんなところだ。
「清々する…」
心の中に思っていた言葉を吐きだしてみて、それが虚しい事に気づいた裕一郎は頭から布団を被るとギュッと目を瞑った。
.


