なぜかいつもより1時間も早く目が覚めた。
大抵はそのまま2度寝をするのに、その日に限って裕一郎は『たまには早めに学校へ行くか』と制服に着替え、事務所の方に顔を出す。
滅多なことをするもんじゃない…気づくのは後のことだ…。
早起きは三文の得であったとしても、酷い目に遭うとは夢にも思わないはずだ。
当然、裕一郎もその1人である。
既に日差しが眩しい7月の朝。
河村に『珍しいな』とからかわれながら、何も知らない裕一郎は家を後にした。
駅へ向かういつもの道を歩いて行く。
すると、
ひらり…ひらり…
銀の美しい羽を持つ蝶が、裕一郎から離れていった。
朝日を受け銀の光を纏うように、空を舞う。
ひらり…ひらり…
主に何も告げず、蝶はそのまま静かにどこかへと消えていった。
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