俺はぽかん、と口を開けた。


スタッフに囲まれ、笑顔の真ん中にいるあいつを見る。


こんなNG初めてだ。

スタッフがNGだされて、こんなに笑ってるのも見たことねぇし

NG出して、人のせいにしない女優も見たことねぇし。


そして何より俺がなんとも思ってないのが一番驚いた。


前なら撮影を中断されたら絶対、苛立ったのに。



はっ、と気付くと目の前にあいつがいて、俺をのぞきこんでいた。

「……!…なん…だよ」

「ごめんね、最後の最後に」

「…別に」

NGを謝る奴も初めてだし。


「明日、七時にAmore」

「は?」

「白羽壱流もあそこのお店、よく行くでしょ?オーナーが言ってたよ」


意味わかんねぇんだけど。


「奢るよ、約束どーりっ」

「別にいいんだけど」

高崎が「奢るから!じゃーね」とか勝手に言い残し、戻っていった。



「やっぱ可愛いな」

「っ!?ばばぁ、いつからっ」

「なんだよ、からだ!」


最初からじゃねぇかよ。


「ちょっとお前も興味持っただろ?」

「は?なんで俺があいつなんかに興味持つわけ?ありえねぇから」

不満げに俺を見るばばぁを無視し撮り直しの準備。

…ありえねぇよ。


俺が興味持つなんか。