そしてついに、桃の目から涙がこぼれ落ちた。まさかこんなところで、こんな状況で失恋するなんて、きっと夢にも思わなかったのだろう。そんな桃の隣で愛加が「泣くな。」と言いながら、桃の頭を軽くなでていた。
ま、あと一押しってとこだね。仕上げに陽路を悪者にして一段落だ。
「……でもね、陽路ってヒドいんだよ。陽路、実は今、同じ学校の木原君とつきあってるの。それなのに、藍前君にまで手を出して…。」
うつむいたまま、唇を噛みしめるフリをする。黙ったままの愛加と桃の雰囲気から、あたしは自分の作戦が成功したことを悟っていた。
「涼夜君、可哀相…。」
「うん…。大崎先輩って、そういう人だったんだ…。」
しばらくして二人が零した言葉。素直ってホントに簡単だよね。悪く言えば単純過ぎな訳だけどさ。こんな嘘に、まんまと騙されてくれるんだもん。
言い方を変えれば、恋っていうのは恐ろしい。自分と相手以外、何も見えなくなってしまうんだから。

