「慈朗ごめん…。涙で濡れちゃった。それに手…。大丈夫?」
だいぶ落ち着いた頃、そう言って慈朗から体を離したあたし。でもずっとずっと気になってたまま、聞くことができなかった慈朗の怪我。テニス自体はやっているようだけど、後遺症とか…ないよね?
「気にしなくていーよ!こんなの、すぐ乾くから。それにね、怪我だってバッチリ!心配いらないよ。」
無邪気な笑顔をあたしに向け、慈朗はそう言う。変わらない笑顔に少し安心。心が和む。
刹那、後ろから聞こえてきた足音。何だかイヤな予感がするけれど、ゆっくりと振り返る。
「あっれぇ?もしかして陽路じゃない?久しぶりだねぇ。元気だったぁ?っていうかぁ、海星のマネが凌葉の選手に何か用かなぁ?」
イヤな予感っていうのはよく当たる。あたしの背後には、あたしにそう矢継ぎ早に質問し、不敵な笑みを浮かべる美香がいた。
会いたくなかった、話したくもなかった、あたしの敵。

