月が照らす道を、二人手をつないで歩き出す。つながれた手から伝わる体温が、あたしに何とも言えない安心感をもたらした。
このときのあたしは、美香が言っていたことなんて何一つ思い出すことなんてなかった。
「また明日〜。」
「ん。バイバイ。気をつけてね。」
あたしの家の前で慈朗と別れる。
遠くなる後ろ姿を見て、なんだか胸が締め付けられるような気持ちになった。冷めていく手の温もりが寂しくて、虚しくて。知らず知らずのうちに、こんなにも慈朗に依存していたんだと、思わず自嘲する。
でも慈朗の存在のおかげで、頬と口内の痛みも、今日の出来事でさえも何ともないと思えた。あたしは独りじゃない、だから大丈夫。そう思えたから。
だけどこのときのあたしは、今のことだけで精一杯で。明日からのことなど考える余地もなく、無情にも夜は明けていく――…

