「なんで、そんなに詳しいんですか?」



ユウヤさんは僕を見て鼻でクスリと笑った。



「昔な、オレ、対立していた族に拉致られたことがあってさ。その時に、永輝さんに助けられたことがあったんだよ」



柚羽さんから聞いたことがあった。

仲間が捕まって、それを永輝さんが助けに行ったと。

さらに、その永輝さんを助けに行ったのが、かんなさんのお兄さんだった。



「永輝さんが来た時にはオレ、記憶がぶっ飛んじまってよ。永輝さんが半殺しにされたことや、その時の頭が年少送りになったことを、後になって知ったよ」



僕は、かんなさんのお兄さんのことについては何も聞かなかった。

会うことも話すこともできない。

後輩が命を落として、妹は意識が戻らない。

そんな状況の彼に、永輝さんのことを聞くのはとても酷なことだと思った。



「いろいろ、ありがとうございました」