理由を全く話さず一方的に聞く僕に、兄ちゃんは何も聞かずに答える。



「……ユウヤっていうヤツだけど」

「ユウヤ……」



違う。

僕が記憶している名前は、永輝、遼太郎、かんな……。


……かんなさんのお兄さん…。

そういえば、かんなさんのお兄さんの名前を聞いていなかった。



「そのユウヤさんって人に、妹はいますか?」

「あぁ、いるよ。…あー、名前なんていったかなぁ」



思い出そうとする兄ちゃんに、僕はドキドキしながら震える声でその名を出した。



「…かんな……さん?」

「うーん…。そういや、そういう名前だったかなぁ?」



兄ちゃんがそう言い終わった直後、僕はものすごい勢いで座り込み、両手を床に付いた。