「…現実はそう甘くないぜ?」



眉間にしわを寄せた遼太郎さんのその表情に、僕は絶望した。

まだ、核心にも触れていないのに、いくらバカな僕でも予測できた。



「事故った時、姉さんの左手の薬指には指輪があったんだ。事故の後、検査する時に外したらしいんだけど、名前が彫ってあったんだよ。永輝くんの名前がね」

「…………」

「指輪のサイズもピッタリだった。姉さんのために贈られたようなもんさ」



僅かな望みが、あっさりと絶たれてしまった瞬間だった。

誰に何を聞いても、答えは同じだ。


だけど、唯一の救いは、遼太郎さんからみて永輝さんがちゃんと柚羽さんを好きでいてくれたこと。

はっきりと永輝さんの口からそう聞いたわけじゃなかったけれど……。


『ちゃんと好きだったと思うよ』


永輝さんがいなくなってしまった今は、その言葉だけで僕はじゅうぶんだった。