たった一度しか行ったことのない柚羽さんのアパート。

しかも、自分の家から向かうのは初めてだった。


それでも僕は迷うことなくアパートへとたどり着いた。



チャイムのない柚羽さんの部屋のドアをノックする。



――コンコン…コンコン…


パタパタとこちらに向かってやってくる音がドア越しに聞こえる。


カチャリと開かれたドアの向こうには、驚いた顔で立っている柚羽さんの姿があった。



「……どうしたの?」

「あぁ、いや、ちょっと寄ってみたんだけど……」



気まずそうに僕が言うと、柚羽さんは「コーヒー飲んでく?」と僕を部屋に招き入れた。