「他にも買うものあるでしょう?」
「えっ!? 何買うの!? お茶!?」
「透……、一体何に緊張してるの?」
な、奈々さん……黒いオーラが体中を包んでますよ? 自分で気付いてる? そのオーラね、怨霊に見えるんだよ?
怖くなったので視線を逸らしたら、「透?」と威圧感たっぷりの声で呼ぶ奈々に思わず姿勢を正す。
こ、こぇぇ……。
「泊まることに、何をそんなに緊張していたの?」
にっこり笑う奈々だけど、あたしの背筋は凍る。冷や汗まで出てきた。
「え……昴……の、ご両親に会うこと……だけど……?」
――ヒィッ!
空気が凍った気がした。微笑んでいた奈々が、急に真顔になったから。
「だだだだって! 泊まるっていったら、昴のご両親と長く一緒にいるってことじゃん! あたしまだ1回しか会ってないんだよ!? しかもお母様にだけ数分! 緊張するでしょ!?」
本当のことなのに何でか言い訳してるみたいで、心臓がバクバクいってる。
大体、ご両親に会う以外で他に緊張することなんてないじゃんか!
そう目で訴えながらもビクビクしていると、奈々はニコッと笑う。
ホッと安心したのも束の間。
「このバカ犬が」
「なんでぇぇええ!?」
今にも舌打ちしそうなほど眉を寄せて言い放った奈々に叫ぶと、後ろから頭をコツンとノックされた。
「トール? どしたの?」
「――っ!」
「なんのハナシ?」
青い瞳を柔く細めて、唇に優しく弧を描く王子の登場に心臓爆発寸前。



