「ヤダヤダ行かない! 学校なんか行きたくないっ!」


昨日あのまま奈々の家に泊まったんだけど、泣き疲れたのかあたしは車の免許を持ってるちぃ君に送ってもらってる途中で寝てしまった。


目が覚めるなり奈々にお風呂に促されて、部屋に戻ってきたらきたで、制服に着替えるように言われてしまって……。



「学校行ったら昴に会っちゃうじゃん! 無理! ヤダ! 会いたくないんだってば!」


──バシンッ!と奈々に思い切り叩かれた頭を抱えると、頭上からドスの効いた声が降り注ぐ。


「このまま泣き寝入りする気?」

「今日くらい休ませてくれたっていいじゃん……!」


今、あたしの心は粉々なの! 塵のように粉砕したの! ブロークンハートなのっ!


「冗談じゃないわ。タイムリミットは4日間よ」

「なんの!?」

「昴とレイの鼻をへし折ってやるのよ。透を傷つけたこと、私を敵に回したこと、せいぜい後悔するといいわ」


いつも以上に黒いオーラを纏った奈々に、体が強張る。


「でも、そんなの……」


ふたりが愛し合ってるのを明確にしちゃうだけじゃん……。



「言っておくけど、止めても無駄よ? 私、怒ってるの。土下座されたって絶対許さない」

「奈々……黒いよ……」

「黒いんじゃないの、ドス黒いの」

「…………」


大魔王奈々様、ここに君臨。


「分かったらこれかぶって。これも掛けて。あとこれ着てちょうだい」


次々と手渡されたのはロングのウィッグ、赤い縁のダテ眼鏡、Yシャツとカーディガン。


それからダイヤ柄の黒いストッキングとブラウンのローファー。



「……な、何これ。変装?」

「黙って着なさい透」

「…………はい」



奈々の陰謀が、始まった。