『――…モジモジ……』


クリスマス・イヴ。

街並は赤や緑で彩られ、クリスマスツリーや懐かしいクリスマスソングが雰囲気を更に盛り上げている。


カップルや家族連れが溢れ返ってる街の一角に、あたしはひとり立ち尽くしていた。


「……はひ?」


オレンジ色の携帯を耳から離して、画面を凝視する。


確かに昴に電話をかけたはずなのに、出たのは昴じゃなかった。



「もしもし……!?」


もう一度携帯を耳にあてると、荒い息が聞こえてくる。


『モジモジ……』


体中にゾワッと鳥肌が立った。


「アンタ誰!? 昴は!? 昴を出してよーーっ!!」


モジモジって何!? オカマみたいな声して何言ってんの!? 変態!?


電話の向こうからは荒い息しか聞こえない。


――はっ…! まさか誘拐!? 昴の世界遺産並の美しい顔に一目惚れしたオカマ!?



「いやだぁぁああ! 昴を返してよ変態ぃぃぃいい!!」

『ジンジャウ……』

「はぁ!? ジンジャウって何!? 誰なの!? ドコの国のオカマですか! 昴にかわってよぉおおお!」



道のド真ん中で喚いていると、間延びした声が聞こえた。